審美ゾーン

審美ゾーン

審美性を考えたインプラント治療

インプラント治療というと、人工歯根を埋入し歯を再建する治療法ということはみなさんもご存知と思います。そこで大切なことは、再建された歯が審美的(見た目)に満足できるものでなければならないということです。笑顔のもつ魅力を最大限に引き出すために、3つの構成要素「歯列」「口唇」「インプラント周囲粘膜」の相互関係を考える必要があります。

1.正しいインプラントを正しい位置へ

前歯部にインプラントを用いる場合、その治療の成否は様々な技術の熟達度にかかってきます。インプラントの埋入位置が適切でなく、また、周囲の硬組織(骨・歯)や軟組織(歯肉等)の管理が不十分である場合、インプラント自体が植立できても審美的には良好な結果とならない可能性があります。インプラントの補綴物(人工歯・上部構造)も天然歯に匹敵する審美性を持つべきですが、これを成功させるためには、歯科医師がインプラントの特性や形態を理解するとともに、歯冠や歯根の解剖学的形態を理解することが必須です。しかしながら、すべての歯科医師がそうであるとは限らず、常に最新の知識と技術を修得している医師にかかることが大切であると我々は考えます。

審美的なエマージェンスプロファイル(歯肉から歯の立ち上がり方・歯の形状)を得るためには、正しいサイズのインプラントから解剖学的に適切な形態をもつ歯冠部にかけてのスムーズな移行が大切になります。正しく設計されたインプラントの補綴物は、調和がとれていて周囲の歯(歯列)と馴染みやすい状態となります。

補綴に対する審美的な要求が高くなると、治療計画のなかでインプラント周囲組織への対応は優先順位の高い重要な事項となってきます。最近では、一次手術の際に硬組織(骨・歯)と軟組織(歯肉等)を再建し、二次手術もしくはプロビジョナル(※)の補綴を行う際に軟組織(歯肉等)の処置を行う傾向にあります。

(※プロビジョナル:仮歯や仮の入れ歯のこと。最終の補綴物(歯)が入るまでの間、暫間的に使用します。最終の補綴物(歯)を模した歯を実際にインプラントに装着することにより、噛み合わせや歯の形態・見た目の適切さの見極めや、周囲歯肉の状態などの改善など、最終チェックを行います。非常に重要な工程です。)

2.辺縁骨と歯肉組織の維持

表面構造図

正しく埋入されたインプラント、そして審美性に優れた補綴物を長期にわたり維持するためには、埋入後のインプラントと人体との調和が大切です。当医院が使用しているアストラテック・インプラントでは、マイクロスレッドと呼ばれる微小ネジ構造と、TiOblast処理をした表面構造(右図-a)により、インプラントと顎骨がしっかりと結合し、これによりインプラントに加わる負荷はインプラント全体に均一に分散するので、どこか一点に応力が集中することが回避されるものとなっています。

通常、歯肉組織の辺縁の高さはその下層の骨組織と歯の表面形態に左右されています。下層の骨組織の厚さは、頬側の骨辺縁部の安定性に影響を与えるため、頬側面の歯肉組織の位置にも影響します。

最近発表されたアストラテック・フィクスチャーSTに関する臨床研究では、辺縁の骨頂部は他に例がないほど良好に維持されており、その結果、インプラント周囲軟組織の予知性と安定性が長期にわたり保証されることが示されました。

インプラントの耐久性を不安に思う方もいらっしゃると思いますが、このようにインプラントは常に研究され進化し、現在では20年後の残存率が90%以上と言われております。

3.審美性の高いインプラント治療に大切なこと

何よりもあなたとドクターとの信頼関係が大切でしょう。その為にはより多くの話し合いの時間をつくり、あなたの意思、希望を沢山伝えることです。信頼できるドクターであれば、あなたの意思をしっかりと把握し適切なアドバイスをされるはずです。またご自身が知識を持つことも大切で、それによりドクターの知識・技術をより理解でき、しっかりとした信頼関係が築き上げられます。

例えば、あなたは審美性を高めるためにせっかくなら真っ白な歯にしたいと言ったとします。その白さが似合えば別ですが、真っ白な歯は誰でも自然に似合うとは限りません。あなたの希望に反してでもそれをしっかりと説明し、より自然な色を薦めてもらえるようなドクターとの関係が大切なのです。

4、素材にこだわる

美しく、そして長持ちする、ということを考えると、素材の重要性が挙げられます。良質なものほどどうしても高価になる傾向がありますが、インプラント自体も、装着する補綴物(歯)も良質であることが必要条件となります。どのようなインプラントを用いるのか、歯の素材にはどのような種類があるのか、十分に相談し選択されることをお勧めします。

ケースレポート

~ケースレポート①~

右上の前歯が一本、事故で折れてしまい来院されました。ご相談の結果、インプラントによる治療をご希望されました。

初診時

ご自身の歯が無いため、応急的に見た目を補う目的で、仮の歯を両隣の歯に歯科用接着剤で固定した状態です。見た目もあまり良好ではなく、あくまで応急処置ですので、長期間経過すると歯が外れてしまう場合があります。

インプラントによる治療後

治療後イメージ図

インプラントの術後も順調に経過し、アバットメントと呼ばれる土台を取り付けた状態です。この上にインプラントの上部構造と言われる“歯”を作製し装着します。インプラントの両隣の歯は全くキレイなままです。

新しい仮の歯の状態

新しい仮の歯を装着した状態です。

セラミック歯

このままでも歯の機能的には十分ですが、最終的には右図のようなより見た目も自然で美しいセラミックで作製した歯を装着し、治療は終了となります。

インプラントという治療法が無かった時代には歯を喪失した場合、自分で取り外しする義歯かブリッジと呼ばれる治療方法しかありませんでした。いずれの治療方法も利点はありますが、残念ながら喪失した歯の近接する歯に多少なりともダメージを与えてしまう治療方法です。今回のような、両隣の歯がキレイな状態で存在している場合、残存する歯にダメージを与えず、喪失した箇所のみに歯を回復できるインプラントは有効な治療法です。

~ケースレポート②~

上の前歯が3本喪失され、取り外しタイプの義歯をお使いでした。

ケースレポート2 (左)インプラントを2本埋入後、歯(上部構造)を作製する準備を開始した段階。
ケースレポート2 (右)治療後

喪失された箇所に2本のインプラントを埋入し、3本の歯を作製しました。インプラントは必ずしも歯を喪失した本数が手術必要な本数ではなく、喪失した歯の本数や歯ぐき・骨の状態などにより異なります。例えば5本の歯が無くなった場合などは、3本のインプラントを埋入手術し5本の歯を作製したり、片顎14本全て喪失し総入れ歯のような場合には、6から8本のインプラントを埋入し12から14本の歯を作製するなど症例により異なります。患者様は、取り外しの義歯の煩わしさや、食べにくい・発音しにくいなどの不快な状態が、インプラント治療により改善されてご満足頂ける状態になりました。

~ケースレポート③~

左上の前歯を1本喪失されたケースです。

ケースレポート3 (左)同部にインプラント1本を埋入後、最終の歯を作製する過程で仮の歯を装着した状態です。
ケースレポート3 (右)患者様のご希望等をお聞きしながらご相談し、新しい最終の歯を装着した状態です。

仮の歯を装着する目的は様々あります。最終の歯を作製するまでの間の見た目を回復するため、発音や咀嚼機能を回復するため、などいくつかありますが、目的の一つに「最終の歯を作製するための見本・基準にするため」があります。

仮の歯はある程度の範囲内で形を丸くしたり長くしたり短くしたりなど、すぐに調整できます。その利点を利用して、最終の歯の形の参考にします。またその過程で患者様のご希望もお聞きしながら、歯の色も決め、患者様にご満足していただけるような最終の歯を作製していきます。失われた歯を可能な範囲で自然な仕上がりになるよう治療を進めています。

研究・調査
海外レポート
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