Dr.新井の海外レポート7

ヨーロッパインプラント学会 EAO(European Association for Osseointegration)参加レポート at Rome ITALY

こんにちは。アーティスティックデンタル歯科医師・新井です。この度イタリア・ローマで開催されたヨーロッパインプラント学会(EAO)に参加して参りました。益々洗練されてきたインプラント治療。それに伴い、多くの新しい製品も供給されてきています。新たな知識・技術の研修のため参加して参りました模様をご報告申し上げます。

学会のあと立ち寄った水の都・ベネチアでの光景です。初めて訪れましたが、年間何百万人の方が訪れる理由が分かりました。様々な映画の舞台や、絵画になるこの非日常な光景は素晴らしいものでした。同じ地球の中には本当に素晴らしい光景や素敵な街並み、雄大な自然があるなぁと、様々な場所を訪れる度感じます。このベネチアにもまたいつかゆっくりと訪れてみたいです。

EAO Congress Welcome Cocktail party

明日からの学会を前に、前夜祭となるレセプションパーティーが開催されました。今回の学会はAuditorium Parco Della Musicaという立派で巨大なホールでの開催です。

パーティーにはたくさんの方々が参加され盛り上がっていました。ご用意頂いた食事もさすがイタリア。とても美味しかったです。

*Rome

イタリア共和国の首都・ローマはイタリア最大の人口286万人の都市です。ヨーロッパを代表する観光都市の1つでもあるローマには世界遺産や観光名所が数多くあります。せっかくなので学会前日、駆け足で回ってみました。

映画「ローマの休日」でおなじみの“真実の口”。どうしてもしてみたかったので。嘘つきは手を噛まれるとか・・・僕は無傷でした(笑)。
紀元前の競技場跡・チルコマッシモとかつての貴族たちの高級邸宅街であったとされるパラティーノの丘。
ヴィットリオ・エマヌエーレ2世記念堂。19世紀初頭に完成した白亜の建物は周囲の建物とは趣きも異なり、大きさに圧倒されます。
イタリア・ローマを代表する世界遺産・コロッセオ。やはり迫力がありました。時間がないので外からの見学で残念でしたが、またいつかゆっくり見学してみたいです。
サトゥルヌス神殿。紀元前に建設された神殿にはイオニア式とよばれる8本の柱が今も残ります。
ローマ市街は何気ない風景も絵になります。

やっぱりイタリアなので本場イタリアン。雰囲気の良いオシャレなお店で本場のパスタは本当に美味しかったです。ちなみにこの写真のフィットチーネは今回ローマで頂いた食事の中で一番美味しかったパスタでした☆

*EAO Congress 23rd Annual Scientific Meeting ROME2014

今年で23回目を迎えるヨーロッパ最大のインプラント学会・European Association for Osseointegration :EAO。昨年のアイルランド・ダブリンでの開催に続き、今回はイタリア・ローマで開催されました。今回の学会には世界各国から4000名を超える歯科関係者の方々が参加されました。

とても大きなメイン会場も満員です。今回もどのような講演をお聴きすることができるか楽しみです。

昨年のアメリカ・ロサンゼルスの研修でもお世話になったロマリンダ大学、ジョセフ・カン教授のご講演です。

カン教授のレクチャーは、何度お聴きしても参考になります。インプラントは骨内に埋入しますが、埋入するだけであれば特殊なケースを除きそれほど困難なことではありません。良好な結果を得るためには、埋入予定の部位に、適切な大きさのインプラントを適切に位置させることが非常に重要となります。カン先生のご講演では適切なポジショニングについての詳しいお話があり今回も大変参考になりました。

今年も多くのメーカ-から新製品の発表や展示がありました。ヨーロッパ最大規模の学会であるEAOには各メーカーとも特に力を注いでおられます。

会場内は歯科関係者でどこも賑わっていました。美味しい食事も並びます。ついつい食べすぎます。

デンマークの先生から、前歯のインプラント治療についての予後ならびに患者様の満足度調査に関する研究発表がありました。前歯にインプラント治療を行う場合、抜歯後すぐにインプラントを埋入する抜歯即時埋入という方法がよく行われます。その治療方法に関して、治療結果・患者様満足度ともに良好で高い満足度を示すものである、との報告がありました。

イタリアのImburgia先生からは、抜歯即時埋入の4年経過症例に関する経過報告がありました。

前歯抜歯後、すぐにインプラントを埋入し、4年経過時の上部構造ならびに歯肉の状態を評価したものです。

治療前の状態と1年経過時、4年経過時を32人の患者さんのデータを比較した結果、骨および歯肉の状態は安定、その他にもトラブルはなく審美的にも良好な結果であったとの結果でした。前歯の抜歯即時埋入法は症例により非常に有用な方法であります。

こちらはドイツbioimplon社のブースです。インプラントでは骨のボリュームを増やしたり、傷口を閉鎖する目的等で特殊な膜:メンブレンを用いることがあります。各メーカーから様々な特徴を備えたメンブレンが開発され発売されています。詳しいお話ありがとうございました。

*Dentsply Implants Satellite Indusdry Symposium

スイス・ジュネーブ大学のSailer先生からは、従来のインプラント治療の方法と、現在、そして未来における治療方法の違い、進歩についてのご講演がありました。

現在、インプラント治療におけるテクノロジーは益々発展してきました。歯科の様々な治療分野においても、特にインプラント治療における技術の発展は目覚ましいものです。様々なソフトウェア開発、そしてCAD/CAM技術の進歩により、インプラント治療の様々な段階でその技術が応用されています。それにより、より確実に、より安定した品質で、より簡便にインプラント治療が執り行われることが可能となってきました。

現時点でもインプラント治療はかなり洗練されていますが、今後は、さらにそのテクノロジーが進歩、融合され、インプラント治療のあらゆる段階でより良いシステムに進化していくことになるというご講演でした。

アメリカ・ノースカリフォルニア大学のKok先生からは、Astratech implantの新システム・Astratech ImplantEV™についての講演がありました。この新システムのお話は日本ではまだお聴きすることができないので是非ともお聴きしてみたい講演でした。

現在、我々はAstratech implants OsseospeedTX™というシステムを利用しています。今までにも何度かご紹介させて頂きましたこのシステムは現時点でも最高水準のインプラントで世界各国で使用されています。今回新しく導入されたこのAstratech ImplantEV™システムは、現在のものを更に改良し、開発されたインプラントシステムとなっております。

この新システムのインプラントは、現在主流のシステムよりさらに丈夫なインプラントとなり、種類も増えます。また付随する様々なパーツも改良されさらに良いものとなっているそうです。

この新システムにより、インプラントの歯も今までよりさらに安定した維持機構となり、歯を作製するオプションも増えていくことになると思われます。貴重なご講演ありがとうございました。

*A private tour of the Vatican Museums and Sistine Chapel

学会終了後、ヴァチカン美術館を我々、学会参加者のために貸し切って頂きプライベートツアーが開催されました。是非訪れてみたかったので本当に良い機会を頂きました。歴代ローマ法王の収蔵品を展示する美術館はまさに超巨大で、「ゆっくり見ると1週間はかかる」と言われるほどだそうです。実際に見学すると、これほどまでに荘厳で歴史の重みを感じる美術館は初めてでした。

地図の間や署名の間などなど書ききれないほど見どころスポットが満載で、壁画や絵画やタペストリー、彫刻品なども数えきれません。システィーナ礼拝堂などは写真撮影が制限されていましたが、ミケランジェロの最後の審判など圧巻で感動しました。今でも目に焼き付いています。また是非訪れてみたいです。

アメリカ・ロサンゼルスUCLAの研修でお世話になったサーシャ・ジョバノビッチ先生に偶然お会いしました。先生もアメリカから学会に参加されておられました。久しぶりに、しかもローマでお会い出来て嬉しかったです。

今回の研修でご一緒させて頂いたメデントインスティチュートの皆様と、今晩のディナーはイタリアで中華を頂きました。ローマ市街でもひときわ目立つ中華の“○○飯店”の看板に若干の違和感もありましたが、ブロッコリーの炒め物や回鍋肉などなど、とても美味しかったです!

今日も朝から学会です。こんなに天気の良いせっかくのローマ、観光にも行きたくなるのですが・・・。

スイスのHammerle先生からは、歯を作製するマテリアルについてのお話がありました。

歯を作製する際に用いる材料は様々ありますが、それら材料には強度などそれぞれに特徴があります。このグラフも材料の強度について示した一例です。我々、歯科医師はその材料の特性を理解し、それぞれの材料を適材適所に用いる必要があります。

この前歯の状態はインプラントの土台(アバットメント)と通常の歯の土台が混在しています。このような場合もどの材料が審美的に良好な結果を得ることができるか考慮し、材料を選択します。通常、このような状態の前歯をキレイに作製する場合にはセラミックが用いられます。セラミックにも数多くの種類の材料が各メーカーから開発・供給され、それぞれに特徴があります。

またセラミックを素材にした歯には、その内側のフレームに金属、あるいはジルコニアと呼ばれる強度の高い素材が用いられる場合があります。先生からはそれらフレームの違いについての詳しいお話もありました。

また、近年では、強度の優れたセラミックブロックが開発され、金属やジルコニアを併用せず、単一セラミックで歯を作製するケースも増えてきました。歯に近似する強度のこれら材料を、コンピュータを用いて設計し、また作製する歯は、品質も安定し、また審美的にもますます優れた材料として、現在の審美修復には欠かせない材料となってきました。これら一見同じに見える材料でも、それぞれの特徴をよく理解し、インプラントならびに通常の歯にどう用いることが理想的であるのかについて詳しいご講演がありました。

日本国内で発売されているインプラントメーカーでも約50社ほどありますが、世界には約200社のインプラントメーカーがあるとされています。

今回も世界各国のインプラントメーカーからの出展があり、各社とも研究を重ねた開発によってできた製品ばかりで、いかにインプラント治療というものが世界各国で普及し、非常に有用な治療方法であるかが分かります。日本では見かけることのない世界各社のインプラントについて知ることは、非常に参考になります。

アメリカのMorton先生からはインプラントの歯(上部構造)のトラブルに関する講演がありました。インプラントは非常に優れた治療方法で全世界で行われ益々普及しています。その治療は簡単なものではありませんが、決して危険な治療方法ではありません。適切でより良好な予後を得るための高度な知識と技術が必要となります。

これらの症例はインプラントの埋入ポジションが不適切なため、キレイな歯が作製できなかったケースです。もちろんこうならないよう配慮が必要となります。

インプラントの歯を作製する際には、様々なパーツおよび材料が用いられます。それらパーツや材料を用いるにあたって必要なスペースも考慮しなければなりません。

インプラントの歯は、車のタイヤと同じで、絶えず接触し擦りあう人工物です。また患者さんによって咬む力や食べ物も異なるため、タイヤ以上に過酷な環境にあります。それゆえすり減ってしまったり歯が割れたり欠けたりしてしまう可能性がどうしても生じてしまいます。それらを極力防ぐ配慮、また繰り返しそうなりにくいような検討が必要となります。

この日のローマは一日じゅう快晴でとても気持ちが良かったです。参加者の皆さんも外でランチです。

久しぶりの再会に記念撮影。大阪大学でお世話になった佐藤琢磨先生(右)、僕が所属する学会・JAIDでお世話になっている有賀先生(右)とご一緒に。異国の地でお会いするとテンションもあがります。

インプラントの本数に関する講演がありました。インプラントは喪失した歯の本数分全てが必要な本数ではありません。特に全ての歯を喪失した症例では、その際に必要なインプラントの本数がよく検討されます。

通常、インプラントは歯を支えるために存在するので、その本数は多いほど有利となります。実際には、骨の状態、その反対側の顎の歯の状態、コストの問題などから総合的に必要な本数や埋入位置を検討します。

一般に、無歯顎と呼ばれる歯が全てない状態では、支えるインプラントの本数は4~6~8本といったパターンが多いです。今回のご講演では、その本数と、その際に作製する歯の材料などに関する詳しいお話をお聴きすることができました。

大阪大学の医局の後輩が今回の学会でポスター発表をしていました。骨の状態によってインプラントに加わる力の比較についての研究結果に関する発表です。
後輩達の頑張っている姿を見ていると嬉しく思います。準備大変だったと思うけど発表お疲れさま!

当院で使用しているメインのインプラントシステム・Astratech Implantを取り扱うDentsply Implants社のブースです。世界3大インプラントメーカーの1つである同社のブースには今年もたくさんの方々が訪れ、日本にはまだない新製品もたくさん展示紹介されていました。

こちらは光学印象というコンピューターを用いて口腔内をスキャンし、いわゆる“歯型を取る”最新の装置です。口腔内にあるインプラントの位置情報を読み取り、それを用いてコンピュター上でインプラントの歯をデザインしていくものです。近年、各社からこの光学印象を用いた装置が開発されています。この装置が普及すればインプラント治療は益々簡便になっていきます。

今回の学会で僕が最もお話をお聞きしてみたかったDentsply社の新製品のひとつがこちら。日本では未導入のこの小さなネジです。インプラントのパーツには小さなネジがたくさんあるのですが、この新製品のネジには今までのパーツにはなかった工夫が施され開発されています。そしてこのネジによりインプラントの可能性がさらに広がることになります。日本導入が待ち遠しいです。

昨年のスウェーデンの研修でもお世話になったDentsply社のプロダクト担当の方に今回もレクチャーして頂きました。またお会いでき嬉しく思います。ありがとうございました。

こちらはドイツのインプラントメーカーです。ここではインプラントと上部構造(歯)をつなぐ様々なパーツを取り扱っています。普段日本ではあまり見かけないパーツなど色々とご紹介して頂きました。

インプラントの歯(上部構造)には大きく分けて2種類のものがあります。1つは固定性上部構造、これはインプラントに完全に固定することにより上部構造を維持させ、通常患者さんご自身では取り外すことはないタイプのものです。もう1つは可撤性上部構造というもので、これは患者さんご自身で取り外しができるインプラントの歯です。いわゆる“入れ歯”は口腔内で不適合な場合、不安定で維持しにくい状態となりますが、その“入れ歯”をインプラントを用いて磁性アタッチメントやロケーターなどと呼ばれる特殊なパーツで維持させ安定させるものです。各社からその目的に応じたパーツが開発・供給されています。

親切に詳しく解説してくださりありがとうございました。

*Dentsply Implants party

今回も学会終了後の夜に、Dentsply社のパーティーにご招待頂きました。いつもご招待頂きありがとうございます。
今回はローマ市街を一望できる丘の上にある素敵なレストランを貸し切って頂いてのパーティでした。今回も学会終了後の夜に、Dentsply社のパーティーにご招待頂きました。いつもご招待頂きありがとうございます。

会場の中は世界各国から集まられた同インプラントメーカーのユーザーの先生方で今年も盛り上がっていました。素敵な歌声にも包まれ美味しいディナーを頂き、楽しいひと時を過ごさせて頂きました。

パーティーではDentsply社からサプライズなプレゼントがありました。
会場がある丘の上からはヴァチカン・サンピエトロ大聖堂が良く見えましたが、なんと今回のパーティー用に花火を打ち上げてくださいました。ライトアップされひときわ輝く大聖堂のドームを背景に、ローマ市街に打ち上げられた花火はとても美しく、素敵な思い出になりました。
パーティーでは中東レバノンからご参加された先生とお知り合いになりました。先生は日本にも来られたことがあるそうで、僕が日本から来たことを知ると、とても喜んで下さりとても気さくにお話をしていただきました。レバノンでのインプラント治療に関するお話など、まさか聞くことができるとは思ってもみなかったので、本当に貴重な機会に巡り合えました。
またいつか是非お会いしてゆっくりとお話をさせて頂きたいです。先生ありがとうございました。

今回の学会でも、インプラントに関する様々な講演や最新のマテリアルなど学ぶことができました。
日々新しくなるインプラントに関する知識や技術を学ぶため、このような国際学会の重要性を改めて認識した次第です。今回も色々とサポート頂きましたメデントインステチュート代表・伊藤正夫先生ならびに各先生方に心より御礼申し上げます。イタリアの温暖な気候、美味しい食事、素敵な景色を思い出しつつ、今回学ばせて頂いたことをまた今後に役立てて参る所存です。

研究・調査
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