歯科インプラントの素材は何でできている?
歯科インプラントは、顎の骨に人工歯根を埋めて、その上に歯を被せる治療法です。顎の骨に埋め込まれ、体と一体化するものですので、その安全性について疑問をお持ちの方もいらっしゃると思います。そこで、今回はインプラントの素材としての安全性について詳しくご紹介していきます。
インプラントは3つのパーツで構成されています
天然の歯は一つの塊(組織学的にはエナメル質・象牙質等により構成)により成っていますが、インプラントは3つのパーツから構成されています。①インプラントの本体部分であるインプラント体(人工歯根・フィクスチャーとも言います)、②歯茎の上から見える人工歯(いわゆる“歯”の部分です)、③その両者をつなぐ接合部(中間構造体・アバットメントとも言います)です。(②と③を合わせて上部構造と呼びます)。
当院では、いずれのパーツも安全性が確かな物のみを使用しています。
①インプラント体(人工歯根・フィクスチャー)
インプラントの本体、つまり歯根部分で、歯ぐきの中の骨内に埋め込まれる部分となります。フィクスチャーと呼ばれることもあります。素材としては、主に純チタンやチタン合金が使われています。当院では純チタンのインプラント体を使用しています。
②人工歯(歯・上部構造)
人工歯、つまり被せ物の部分です。実際に外から見える部分で、様々な材質からお選びいただけますが、当院では審美性に優れ、生体親和性の高いセラミックを主に使用しております。
③接合部(アバットメント)
インプラント体と人工歯をつなぐ部分で、チタン製もしくは、審美性が特に要求されるケースではジルコニア製(セラミックの一種)もお選びいただけます。
インプラント体・接合部に使われる「チタン」の特性
1.軽い
チタンは他の金属に比べて非常に軽いのが特徴です。銅の半分、鉄の60%という軽さです。とても軽いので、インプラントとして埋め込まれても違和感を感じることがありません。
2.強度に優れる
チタンの強度は重さ当たりでいうと、鉄の2倍の強度があります。そのため、かみ合わせの時に強い力がかかっても折れたり割れたり、変形することが少ないとされています。
3.錆びにくい
チタンは表面に酸化被膜を形成する特性を持っており、非常に錆びにくいことで知られています。塩水や酸に対しても強く、様々な飲食物が入ってくるお口の中の過酷な環境にも耐えることができます。
4.無害
チタンは材質的に安定しており、金属アレルギーを起こしにくく、人体に優しく無害です。その性質から、医科においても人工関節や心臓ペースメーカー、心臓弁、骨折治療に使われるボルトやプレートなどにも使用されています。
「チタン」がインプラントに適している理由
現在のインプラントが生まれるまで
現在、チタンがインプラントの材質として選ばれている理由は何なのでしょう?インプラント治療の歴史は古く、紀元前にまでさかのぼることができます。大昔は貝殻や象牙、宝石などを埋め込んでいましたが、体の拒絶反応で排除され、とても噛む機能を果たしてはいませんでした。
現在行われているインプラントの前身となるようなインプラント治療は、20世紀当初以降に行われたもので、貴金属、コバルトクロム合金などを使っていましたが、やはりそれでもうまくはいきませんでした。
その後、1950年代にスウェーデンのブローネマルク教授らが偶然にチタンと骨が結合することを発見し、1965年に初めてのチタン製のインプラントが誕生しました。
チタンがインプラントの素材として優れている理由
1.金属アレルギーを起こしにくい
チタンは生体親和性に優れていることは先ほどにも触れましたが、金属アレルギーを起こしにくいことが大きな特徴としてあげられます。歯科金属として使用されている金属、特に保険治療で使用されている歯科金属は、稀に金属アレルギーを起こすことが問題になっています。しかしチタンの場合、空気に触れると表面に酸化被膜を作り、金属イオンが唾液に非常に溶け出しにくいため、金属アレルギーを起こしにくいのです。
2.チタンが骨と強固に結合する
自分以外の異物が体内に入ってくると、私たちの体は拒絶反応を示し、その異物を排除しようとする反応を起こすことがあります。ですが、チタン製のインプラントを顎の骨に埋めてもそのような反応は起こりません。インプラントの周囲に新しくできた骨がインプラント表面と強固に結合していきます。
つまり、チタンには骨と結合し、一体化するという特徴があります。これは他の金属には見られない特徴です。最近では、チタン表面の性状によって骨との結合状態も変わってくることがわかってきており、より強力に骨と結合するインプラントが次々に開発されてきています。当院では皆様に安心して治療を受けていただけるよう、様々な研究に基づき開発された最新のインプラントを使用しています。