Dr.新井の海外レポート1
スウェーデン短期留学およびヨーロッパインプラント学会(EAO)参加レポート
アーティスティックデンタルの歯科医師:新井です。この度、私は坂口院長とともにスウェーデンへ短期留学して参りました。
今回の留学の目的は、インプラント発祥の地、そしてインプラント先進国であるスウェーデンでの現在のインプラント治療を実際に訪れることにより学び、多くの著名な先生方のオペレーションに参加、またディスカッションすることで更なる知識・技術を習得し、日々の治療へ役立てることにございます。
日本でも近年、インプラント治療は歯を喪失した際にブリッジや義歯に代わる優れた治療方法として認知され、選択肢の一つとして普及してきましたが、インプラント先進国に比較するとまだまだ特別な治療方法と認識され広く普及していないのが現状です。
そのような中、インプラント治療の有用性を認識し、最新の知識・技術を学び、患者様に安心してインプラント治療を提供できるよう努力することは、私どもの使命でもあります。
アストラテック本社
まず最初にスウェーデンのイエテボリにあるアストラテックというインプラント開発メーカーの本社に訪れました。アストラテック社は世界で最も有名なインプラントメーカーの一つで当医院でも採用しているインプラントシステムです。
アストラテック社では、同社インプラントの開発経緯やコンセプト、最新のソリューション等のレクチャーを受けました。インプラントの素材や特徴・特性を知ることは治療を行う上でとても重要なことです。本社ならではの大変貴重なお話が聞けました。
前歯を審美的に考慮してインプラントにて治療したケースです。様々な研究や新製品の開発、臨床応用により、インプラントはますます審美的に修復できる治療法になってきています。
アストラテックインプラントの研究開発責任者であるスティグ・ハンソン博士のレクチャーを受ける機会も頂きました。今回、是非お話をお伺いしてみたかった先生のおひとりです。
同氏は、ノーベルバイオケア社のインプラント、ブローネマルクシステムの開発にご尽力され、現代インプラントの礎を築かれた博士です。
インプラント体には様々な要件が必要ですが、その中でもインプラントの表面部分の性状は骨との結合に関与する重要な部分です。工学博士でもあるハンソン博士はインプラント体の研究、質の向上に努力し、その後、アストラテック社にて機械的・科学的・生物学的に優れた要件を備えたインプラントを開発されました。
アストラテック社の次世代インプラントシステム:OsseoSpeedTMと呼ばれるものです。日本では残念ながらまだ未承認ですがスウェーデンはじめ世界各国でその有用性が認められ採用されているシステムです。現在までのインプラントにさらに研究・開発を重ね、より早く、確実に骨との結合を得るよう進化させたものです。当クリニックでも採用予定です。私どもにとって大変貴重なお話をしていただきました。
イエテボリ大学
次に訪れたのは、スウェーデン・イエテボリ大学大学院サーレンスカ病院です。イエテボリ大学はインプラント治療の総本山とも言える大学で、世界中から多くの歯科医師が研修に訪れます。
イエテボリ大学での研修目的は同大学顎顔面外科主任教授カール・エリック・カーンバーグ教授の講義および手術に参加することでした。
インプラント治療は成功率の極めて高い治療法ですが、ごく稀に偶発症と呼ばれるトラブルが発生することがあります。その際の対処法についての様々な処置法について知ることは大変重要なことであります。カーンバーグ先生のレクチャーでは主に偶発症発生時の適確な対処法についてご教授頂きました。
イエーブレカウンティホスピタル
次の研修先は、スウェーデンのイエーブレという都市にあるイエーブレカウンティーホスピタルという公立の病院です。イエーブレカウンティ病院は近代的な総合病院で、顎顔面外科は多くのインプラント症例を持つ専門科です。
ヨーロッパインプラント学会
スウェーデンでの研修も無事終了し、最後にポーランドに移動、ワルシャワで開催されたヨーロッパインプラント学会(European Association for Osseointegration:EAO)という学会に参加してきました。EAOは今年で17回目を迎える世界トップクラスの臨床家や研究者、開発メーカなどが一堂に会する学会です。
ワルシャワはその歴史経緯から、新旧の混在した東欧の雰囲気が強く漂う静かで素敵な街でした。
とても巨大で格式のある歴史的な建造物である会議場が今回の会場です。中は宮殿のようでした。
歯周病学の世界的権威、Jan Lindhe博士の講演です。学生の頃の歯周病学の教科書にも必ず載っているほど著名な先生です。世界中の歯科医療に従事しておられる多くの先生方や衛生士の方々がリンデ先生の研究や考えに触れ学んでおられます。またリンデ先生はインプラントと歯周組織についても数多く研究されておられます。
ドイツのStefan Hassfelt先生、アメリカのClark Stanford先生からは最新のソリューシュンについての講演がありました。
インプラントは通常1〜2センチ弱の長さのものを顎骨に埋入しますが、必ずしも十分量の骨が必要部位に存在するとは限りません。この発表は少ない骨量の部位に4ミリという極めて短いインプラント体を埋入した際の治療結果を発表したもので、大変興味深い発表でした。
学会終了後、アストラテック社のパーティーにご招待して頂きました。Hard Rock Cafeを貸し切ってのパーティーということもあり、先生方や関係者の皆さんが大いに盛り上がっておられました。
スウェーデンの研修から始まりワルシャワでの学会まで、世界で活躍されておられる先生方のオペに参加そしてディスカッション、またインプラントに関する最新の知識や技術に触れ、と本当に濃密でたくさんの出会いがあった大変有意義で勉強になった研修でした。今回、貴重な機会を与えて頂いた坂口先生およびメデントインスティテュートの伊藤正夫先生、ならびに研修ツアーにご一緒させて頂いた先生方に心より御礼申し上げます。本当にありがとうございました。心地よい疲労感を感じつつ、今回で得たものをまた明日からの診療に役立たせるよう今後も頑張る所存です。