Dr.新井の海外レポート3
Nobel BiocareGlobal Symposium 2010 -New York-参加レポート
こんにちは。アーティスティックデンタルの新井です。この度、私はアメリカ・ニューヨークで開催された学会に参加して参りました。
今回の学会はスイスチューリッヒに本社を置く世界的なインプラントメーカー・Nobel Biocare(ノーベルバイオケア)社の主催する学会です。現在、同社のインプラントは世界シェアの約4割近くを占めるそうで、当院でも導入しているインプラントシステムの1つです。日本でもますます普及してきているインプラント治療ですが、海外では様々な事情が日本と異なり、また日本未導入の新製品もたくさん使用されています。
そのような中、インプラントに従事する歯科医師として、最新のインプラント事情を学ぶこともまた重要なことであると認識しております。
アメリカ合衆国最大の人口を抱える街・ニューヨーク。
その姿はどの場面もまさしく映画のワンシーンのようでした。
一番右におられるのが中野先生、その隣が楠本先生、ともに僕の大切な先輩です。
後ろに映るのが山西先生、僕より背が高いですがとても可愛い後輩です。このメンバーでの海外学会の参加は初めてなのでとても楽しみです。
世界経済の中心地・ウォール街にあるNYSE(New York Stock Exchange)。世界最大の証券取引所の前には大きな星条旗が掲げられていました。
9.11同時多発テロにて約3000の命が失われたWTC(World Trade Center)跡地であるGround Zero。現在は復興に向け工事も進んでいるようで、2013年には地上540mの超高層ビルが完成するそうです。
Nobel Biocare Global Symposium 2010 -New York-
会場内の様子
ベルギーのEric Rompen教授から、インプラント周囲組織(歯肉や周囲骨)の安定性にインプラントに装着する歯の種類や材質・形状が及ぼす影響についての発表がありました。
また、アバットメントの形状により、インプラント周囲組織の安定性に違いがあるかについての研究結果も詳しくお話頂きました。
作製する歯に一切金属を用いないこの方法は、審美的にもかなり有利な方法で、また周囲軟組織(歯肉)の安定も良好な結果が得られるとのことでした。
ノーベルバイオケア社の新世代インプラント・Nobel ActiveTM
The Joyce Theater公演前の劇場
私事ですが、高校時代の友人がニューヨークでタップダンスをしています。日本から単身、本場NYに行ってタップダンスを学ぶと最初聞かされた時は正直「大丈夫か??」と不安でした。いつか機会があれば必ず観に行くと約束していましたが、今回、彼に連絡したところちょうど学会期間中の夜にNYで公演中とのことでショーに招待してくれました。
ノーベルバイオケア社より現在供給されているフィクスチャーのうちの3種類を比較したものです。(左からMkTM、ReplaceTM、ActiveTM)。それぞれに特徴を持つフィクスチャーで形状が異なります。同じような“ネジ”でもその全体の形状や歯をつなぐ部位の形状に違いがあり、それぞれ様々な研究結果に基づいて開発されています。
ノーベルバイオケア社の新世代シュミレーションソフト・Nobel ClinicianTM
我々歯科医師はインプラントの手術をする際、X線画像や口腔内の状態、またはその状態の模型などを総合的に診断し、どのような長さのインプラントをどの方向に何本埋入するかなどを計画・診断しますが、現在ではそれらをコンピューター上でするべく、様々なインプラントメーカーから各種の診断・埋入シュミレーションソフトが供給されています。ノーベルバイオケア社のNobelGuideTMというシュミレーションソフトは日本でも普及し使用されていますが、その新製品であるNobel ClinicianTMというソフトが展示されており、とても興味深いものでした。
Master Class program
この日は早朝7時からのモーニングセミナーに参加しました。アメリカのSascha Jovanovic先生の”SOFT TISSUE MANAGEMENT”というレクチャーで、今回の学会で最も楽しみにしていたセミナーの一つです。ジョバノビッチ先生は失われた歯をインプラントにて再建する際、その周囲の歯周組織(歯肉や歯槽骨)を審美的に回復し、再建することで有名な先生です。この日のレクチャーでは、いかに審美的にインプラントにて歯を再建するかの必要条件・手技について詳しく講義していただきました。
通常、上顎骨もしくは下顎骨に用いられるインプラントは長さ1センチ前後ですが、このザイゴマインプラントの特徴は、上顎骨に続く頬骨に安定を求めるため、長さが約5センチと長いことです。長さがあるため少しの角度のずれが先端の位置に大きく影響するため、より複雑な骨の形態に対応するよう正確な埋入が必要とされます。
Zygoma Implantをより正確に埋入するため、コンピューターでシュミレーションした様子です。 CT画像と最終の歯を想定した模型をコンピューター上で重ね合わせシュミレーションを行います。 通常のインプラントより長いZygoma Implantをより安全に使用する場合にはかなり有利な方法です。
NobelProceraTMManufacturing Plant Tour
次にノーベルバイオケア社のプラント見学ツアーに参加してきました。学会場があるマンハッタン中心部から車で約1時間、ニューヨーク州の隣、ニュージャージー州にあります。ここでは、顎骨内に埋入されたインプラントの上部に装着する歯(上部構造といいます)を作製しています。患者様の口腔内に実際に装着されるものがどのように作製されているか、その現場を実際に見学することはとても重要なことだと考えています。
この日は知り合いの方に紹介して頂いたイタリアンレストラン(VIA EMILIAさん)にて夕食を頂きました。
学会も無事終了したNY最終日。どうしても行ってみたかったニューヨーク 近代美術館(The Museum of Modern Art)、通称MoMAに行ってきました。
館内には様々なジャンルの作品が展示されていてとても楽しく鑑賞することができました。
ちなみにこの美術館の建物は日本人建築家による設計だそうです。
ニューヨークまでの旅路は思っていた以上に遠いものでしたが、学会に参加することで新しい知識・日本未導入の新製品に触れ、また実際の製品製作プラントも見学することができ、とても有意義なものとなりました。今回ご一緒させて頂いた大阪大学歯学部附属病院の先輩方、また後輩に心より御礼申し上げます。この学会で得た知識・技術をまた新たに日々の診療に役立てて参る所存です。